労災ろうさいが認みとめられたのは横浜よこはま市しに本社ほんしゃがある外資がいし系けいの補聴器ほちょうきメーカー、「スターキージャパン」に勤務きんむする、50代だいの女性じょせいです。

代理人だいりにんの弁護士べんごしによりますと、女性じょせいは経理けいりや総務そうむなどを担当たんとうする正せい社員しゃいんで、新型しんがたコロナの感染かんせん拡大かくだい後ごにテレワークをするようになりましたが、新あたらしい精算せいさんシステムの導入どうにゅうなどで2021年ねんの末すえごろから業務ぎょうむが増ふえ、翌年よくねんの3月つきに適応てきおう障害しょうがいを発症はっしょうしました。

直前ちょくぜん2か月かげつの残業ざんぎょう時間じかんは、1か月かげつあたり100時間じかんを上回うわまわり、いわゆる過労かろう死しラインを超こえていたということで、横浜よこはま北きた労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょはことし、労災ろうさいに認定にんていするとともに、会社かいしゃに是正ぜせい勧告かんこくを出だしました。

弁護士べんごしによりますと、長時間ちょうじかんのテレワークで労災ろうさいが認みとめられるのは、極きわめて異例いれいだということです。

女性じょせいの代理人だいりにんをつとめる笠置かさぎ裕ひろし亮あきら弁護士べんごしは「長時間ちょうじかんのテレワークが心身しんしんに大おおきな影響えいきょうを及およぼすと認みとめた、画期的かっきてきな認定にんていだ」としています。

スターキージャパンは「指摘してきされた事項じこうについては是正ぜせいを完了かんりょうした。在宅ざいたく勤務きんむのときに長時間ちょうじかん労働ろうどうが起おきないよう、上司じょうしへの申請しんせいを義務ぎむづけている」としています。

専門せんもん家か「テレワークも普通ふつうの労働ろうどう 原則げんそくに沿そった認定にんてい」

労働ろうどう法ほうに詳くわしい神戸こうべ大学だいがくの大内おおうち伸哉のぶや教授きょうじゅは「リモート環境かんきょうで上司じょうしの目めが届とどかないという特殊とくしゅ性せいはあるが、テレワークも普通ふつうの労働ろうどうと変かわりはない。今回こんかいのケースはその原則げんそくに沿そった認定にんていといえる」と述のべました。

そして「企業きぎょう側がわには従業じゅうぎょう員いんに対にたいする健康けんこう配慮はいりょ義務ぎむを適切てきせつに果はたすことが、行政ぎょうせいには企業きぎょうをきちんと監督かんとくすることが求もとめられる。働はたらき方かたが広ひろがるなどテレワークにはよい面めんも多おおく、どのように活用かつようしていくか、法ほう整備せいびも含ふくめた社会しゃかい的てきな議論ぎろんが必要ひつようだ」と話はなしていました。

テレワークで長時間ちょうじかん労働ろうどうも 労働ろうどう管理かんりが課題かだい

テレワークは新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん拡大かくだいで、急速きゅうそくに広ひろまりました。

総務そうむ省しょうの通信つうしん利用りよう動向どうこう調査ちょうさによりますと、テレワークを導入どうにゅうしている企業きぎょうの割合わりあいは、

▽感染かんせん拡大かくだい前まえの2019年ねんは20.2％でしたが、

▽2020年ねんは47.5％、

▽2021年ねんは51.9％、

▽2022年ねんは51.7％となっています。

一方いっぽうで、連合れんごうが2020年ねんに行いった調査ちょうさでは、

▽「出勤しゅっきんしての勤務きんむよりも長時間ちょうじかん労働ろうどうになることがあった」という回答かいとうが51.5％を占しめたほか、

▽「仕事しごととプライベートの時間じかんの区別くべつがつかなくなることがあった」という回答かいとうが71.2％にのぼるなど、適切てきせつな労働ろうどう管理かんりをどう実現じつげんするかが、課題かだいになっています。

精神せいしん障害しょうがいによる労災ろうさい認定にんていは増加ぞうか傾向けいこう

過重かじゅう労働ろうどうをめぐっては、2014年ねんの過労かろう死し防止ぼうし法ほうやその後そのごの働はたらき方かた改革かいかく関連かんれん法ほうによって、長時間ちょうじかん労働ろうどうが抑制よくせいされてきた一方いっぽうで、精神せいしん障害しょうがいによる労災ろうさい認定にんていは増加ぞうか傾向けいこうにあります。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうの毎月まいつき勤労きんろう統計とうけい調査ちょうさによりますと、ひとつき当あたりの平均へいきん労働ろうどう時間じかんは2014年ねんには145時間じかんあまりでしたが、2020年ねんには135時間じかんあまりに減へりその後そのごも136時間じかんで推移すいいしています。

脳のう出血しゅっけつや心筋しんきん梗塞こうそくなどで労災ろうさいと認定にんていされたケースは、この10年ねんほどでは減少げんしょう傾向けいこうとなっていて、昨年度さくねんどは194人にんとなっています。

一方いっぽうで、精神せいしん障害しょうがいによる労災ろうさい認定にんていは増加ぞうか傾向けいこうにあります。

厚生こうせい労働ろうどう省しょうによりますと、仕事しごとの強つよいストレスや長時間ちょうじかん労働ろうどうが原因げんいんでうつ病うつびょうなどの精神せいしん障害しょうがいになったなどとして昨年度さくねんど、全国ぜんこくで労災ろうさいと認みとめられたのは710人にんにのぼります。

前まえの年度ねんどより81人にん多おおく、この10年ねんで1.6倍ばいに増ふえていて、調査ちょうさの始はじまった1983年度ねんど以降いこうで最もっとも多おおくなっています。

職種しょくしゅ別べつにみると「専門せんもん的てき・技術ぎじゅつ的てき職業しょくぎょう従事じゅうじ者しゃ」が175件けん、「事務じむ従事じゅうじ者しゃ」が109件けん、「サービス職業しょくぎょう従事じゅうじ者しゃ」が105件けんなどとなっています。

年代ねんだい別べつに見みると最もっとも多おおいのが40代だいで213人にん、次ついで20代だいが183人にんとなっていて50代だいも119人にんにのぼっています。